落語家になりたかった

小学生の頃、私はいろいろと興味のあることが多い子でした。
電車好きが高じて、「国鉄総裁になりたい」と文集に書いてみたり、考古学に興味を持って叔父について行ったり、身近な出来事を新聞にして書いたり、とにかくいろいろとやったものです。

その中で、「落語」がありました。
高座で一人で物語を演じる。その登場人物の間抜けさと、やり取りの面白さにハマった時期がありました。子供会や学校のお楽しみ会(学芸会)で落語を披露したこともありました。まぁ、こういうことに関しては目立ちたがり屋だったのでしょう。きっと当時、こんな目立ちたがり屋の私を面白くないと思っていた子も結構いたんだろうなぁ(笑) でも、天真爛漫というか能天気な私は、全然そんなことは気にしていなかった気がします。

「寿限無」「時蕎麦」と、そんなもんなのですが、浴衣を着て、高座に見立てた机の上で一席ぶっている私の写真が今も残っています。カワイイもんですね。

さすがにある程度分別がついてくると、「落語家になるのは並大抵じゃないぞ…」ということが分かってきます。食って行けるかも分からないし、第一弟子入りしなければいけない… 師匠の言うことを聞いて伝統を守る事なんて、きっと私には出来ません。ゆえに、本能的に避けたのでしょうか、この道の修業をすることはありませんでした。しかし、好きですよ、落語は。塾という喋る仕事を選んだベースにはなっているかもしれませんね。

さて、そんな中、私の好きなものの要件を満たした本が出ていました。

「鉄道落語」古今亭駒次ほか(交通新聞社新書/800円)

好きなものが二つ重なっちゃったようなものですが、こりゃなかなかマニアックな笑いです。普通の人にこの話が分かるかな?ってところもありますが、私は大変楽しめてしまいました。

あまり興味の無い方でも分かりそうなのが、古今亭駒次師匠の「鉄道戦国絵巻」。私は十分面白かったのですが、それでもなかなか伝わらないかなぁ…

お話は、東急東横線が東急を裏切りJRに寝返るというところから始まり、東急の助太刀に様々な線がやってくることになるというもの。東急の他の路線が今までの東横線への恨みつらみを口にしたり、京成、京急などが応援に駆けつけたりと、分かる人には分かる、くすくすっという笑いがあります。

話の中盤で、ここへ西武新宿線が名乗りを上げるのですが、兄の西武池袋線が副都心線を介して東横線と密通しているということが判明します。可哀そうな新宿線は最終的に、兄池袋線が放った「レッドアロー」に射られて討ち死にということに(笑) 私はこれが一番好きだったけどなぁ…

是非、生で聴いてみたいと思いますし、他の3人の師匠のお話も実によく出来た話。分かる人は夢中になって聞いてしまう話でしょう。ただ、一般の方は分かるかなぁ?(笑)

しかし、何でも「芸は身を助く」ものですね。ただ落語をやっているだけではなかなかこんな本を出す機会には恵まれないでしょう。特技・特長があってのこと。今は何でも仕事になる時代。単に勉強が出来る、単に真面目に仕事をこなすのではなく、好きなことをトコトン追究するくらいのマニアックさがあってもいいのだと思います。むしろ、そんな人こそ「おもしろい人」「特徴のある人」になります。

これを、「個性」というのです。
産まれながらに「世界に一つだけの花」ではありません。生まれただけなら、どこにでも咲いている雑草の花。生まれた後に身に着くものが「個性」になります。ただし、勉強はしてね(笑)

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