説法

 先日、祖母の七回忌の法要に出かけました。
 当初、実家の母からは「あんたたち忙しいだろうし、無理しなくていいよ」と、特に来てほしい風でもなかったので予定していなかったのですが、急に来なくなった一家がいるので、来れるなら来てほしいとの連絡。2日前です。
 「最初から来てほしいって言っといてくれればいいのに」、と夫婦で笑っていたのですが。

 私は、弟が生まれる際に母が長期入院したので、母の実家に10か月近く預けられていました。祖父母に育てられ、躾もされました。実家の家業が印刷屋だったので、いろいろなことを知りましたし、おそらく活字に親しむようになったのもこのころではないかと思います。祖父母の教育は厳しかったのですが、私の躾のルーツはここにあるのかもしれません。いまだに覚えていることも多くあります。

 私の結婚式に出たいと頑張っていた祖母ですが、残念ながらその希望を叶えることが出来なかったのは非常に悔やまれるのですが、亡くなる直前、様々不思議なことがあった祖母。祖母の家の前の公園まで結婚前の妻を連れて行ったこともありますし、亡くなる当日も「そばに居なさい」と言われているようで、不思議なことがあって、私は祖母がまだ温かいうちに駆けつけることが出来ました。

 七回忌。
 夏期講習中にいろいろあって、夫婦で悩むこともありました。

 浄土宗の有難い(私は大好きな)住職が、いつものように読経を終え、皆でお念仏を唱え、最後に少し御説法をして下さるのですが、その際、突然こんなお話が始まりました。

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 先日のことでございます。
 浄土宗の住職の仲間たちで小学生たちを対象としたサマーキャンプを開き、数日間お子さんをお預かりしました。お寺のすることですから、朝晩のおつとめや食事の際の作法など、躾の面で様々とお教えすることが多くありました。

 さて、後日。
 偶然にもそこへ参加していたお子さんとそのお母様に道でお会いしました。すると、その方がおっしゃるのです。
 「先生、うちの子、せっかくキャンプに行ったのにもかかわらず、先生の前で申し上げるのは失礼ですけど、三日坊主、いや一日坊主で、すぐ習ってきたお作法を止めてしまったんですよ」と。

 私は、叱ったのでございます。
 お子さんをではありません。
 お母様をです。
 「お母様は、もしそれを少しでも「いいことだ」と思ったならば、何故一緒にやってあげなかったのですか?」と。
 いくら幼い子供でも、「照れ」というものはございます。どこかで習ってきた「良いこと」も、自分一人がやるようでは、徐々に恥ずかしくなりやらなくなるのは当然でございます。何事も、一緒になって親御さんがやって差し上げなければ、幼いお子さんが習慣を続けていくことは出来ないでしょう。お子さんの生活や習慣というものは、親御さんのお考え一つで全く変わるのでございます。
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まぁ、そこから亡き人を思い出し、お祈りをしていく習慣云々という御説法になっていったのですが、何とも私たちの悩みを知っていたかのような御説法。

帰りがけに、私は住職に私たちの仕事と、私たちの悩みに一つの光明が差したと、お礼を申し上げました。私たちの悩みを知っているかのような御説法でしたと。すると、住職はこうおっしゃいました。

「いえいえ。これも亡き人のお導きかと思いますよ。」

私達が急遽法要に来ることになったのも、まただからこそ住職のこの説法に接することが出来たのも、亡き人のお導きがあったからだと。生前の祖母の不思議な力を考えると、さもありなんと思います。

いつもこの時期が法要・お墓参りの時期。完全なお盆ではないのですが、毎年毎年、お参りに来る前日までは猛暑、そして当日はちょっと涼しくなるというのもお婆ちゃんの不思議な力(笑)

「あの世からもこっちをコントロールしてるんだから、大したお婆ちゃんだよね」と親戚一同笑っていました。

TVなどを見ていると、様々な僧侶がいますが、私はこのお寺の住職は大好きでした。しかし、今回それは「尊敬」にまで変わりました。本当に「宗教者」として誠実におつとめしているのが分かりますし、言葉にありがたみがあります。

同じ区内に住んでいるのも、何かそばに居るように呼ばれているような気がしていましたし、いつも祖母は近くにいる気がします。年に一度のお墓参りなのですが、大切にしておかねばならない行事なのだと感じました。
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