「食」の経験

ある方と話をしていた際に、「その人の文化的・知的レベルを如実に表すのは『食』である」と聞いて、とても納得したことがありました。

手前味噌ですが、我が母は「後学のために」と、ナマコやらアボカドやらホヤやら、いろんなものを一度は買って食べさせてくれました。おかげで、食べたことがない、知らない、見たことも聞いたこともないというものは比較的少なかったように思います。


食文化というのは、その国の文化を代表するものですし、食事の席というのは最大のコミュニケーションの場、そして自分を成長させる場でもあります。 ビジネスの場合でも、食事をきっかけにお近づきになって事が進むということもありますし、意外な大物や自分よりも年長の方・上の方とお話をしながら食事をするというのは、男女問わず社会人としての大きな成長になる貴重な機会です。

男性であれば、女性をデートに誘う際、第一の誘い文句は「ご飯食べに行かない?」でしょう? この時にチョット薀蓄が語れたり、ステキなレストランを知っていたりしたらカッコイイわけです。 我々、バブルを若干知っている(もしくは真っ只中の)世代は、シティホテル最上階のバーで夜景を眺めながらグラスを傾けることが「ステキなこと」だと知っています。ところが、76(ナナロク)世代と言われる、1976年生まれ以降の若者達は、残念ながらコンビニの弁当をカップルで分け合っても幸せを感じられるのだと言います。シティホテルの最上階にそんなところがあることも知らず、また知っていても自分とは全く無関係であると思っている、と聞いたことがあります。

また、今の若者の食文化の貧困化も進んでいて、普段食べつけないものは「排除」するという子もいます。以前、お土産にとマレーシアで買ってきたマンゴーグミを配ったら、「美味しくない」「気持ち悪い」「おかしい」などと散々な評価だったことがありますが、そのほとんどはマンゴーを食べたことが無い子でした。これだけ豊かで何でも揃うこの国で、デニーズでもメニューになっているマンゴーを生まれてこの方口にしたことが無いとは!!

マクドナルドのハンバーガーとコーラ、牛丼、カレー、うどん、パスタ。そんなものばかりが口に運ばれ、本格的なインド料理やフランス料理、ドイツ、スペイン、中国、タイ、ベトナム等々、そしてわが国の伝統的「和食」まで、食べられない、食べたことがない…という子が増えてきているのは問題です。子どもの豊かな文化性も育めず、また、他国への理解も深まらず、食についての薀蓄も語れないなどとなると、文化としてはだいぶ心配なレベル。

海外に出る若者達も、現地に行けば現地のものを食べ、現地に染まり、「通」ぶってみるのが海外での最大の楽しみだと思いますし、それが自然に出来たらカッコイイと思うのですが、子どもを海外に連れて行くとすぐに行きたがるのはマクドナルド。和食レストラン。「ここまで来て、何やってんの?」と感じますが、これも日本の若者の実態です。

確かに今の日本では、金銭的に余裕のある若者は少ないのかも知れませんが、その経験をしっかりしないから「上」に行けないのだと歯がゆく思う場面も多々あります。比較的女性は自分より上の人間と食事に出て、人間的・社会人的成長を遂げることが多いようです。海外でバックパッカーとして出会う日本人も十中八九女性です。食についてよく知っているのも女性。完全に女性の方が上ですね。

消極的なのは男性。すぐにツルんで仲間内だけで固まり、排他的。自分より上の輪に積極的に入ることも無く、社会性も養われない… 確実に女性上位の世界がくることを予見できますね。

色々なものを食べさせて、薀蓄を語る。子どもの文化性はこんなところから育まれるのではないかと思います。

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