サヨナライツカ

b0daf6de.jpg 「サヨナライツカ」/辻仁成/幻冬舎文庫

を読みました。

生徒にはオススメしません。だって、R指定でしょ、これ(笑) かなり内容的にはお子様には読ませられないものがあります。ので、保護者のみどうぞ。 

辻仁成という作家は、あまり興味がありませんでした。我が大学の先輩にあたるそうなので(経済学部だそうです)、いかにもだなぁ…と思ったのですが、「エコーズ」を聴いていたわけでもなく、数回「辻仁成のオールナイトニッポン」を聞いたことがあるだけでした。

この頃は、「つじじんせい」でしたね。

その後、いろいろと活動の幅を広げたようで、ラウドなバンドも続けているらしいし、映画監督もしているらしいです。しかし、「つじひとなり」になって、作家になったというのは、あまり興味の無いことでした。

正直、南果歩とか中山美穂とかも、どうでもよかったのです(笑)

ただ、この小説にふと手が伸びました。
「何だか切なそうだな…」
すると、帯に映画化を出ています。

ああ、また映画ね… こういう作品にロクなのはない。そう思っていたのですが、やはり手が伸びました。
「何だか切なそうだ…」

初めて彼の作品をお金を出して買いました。
でも、何となく「積ん読」になってしまったのです。小説を読む時間的余裕が無かった、いや、心の余裕がなかったんでしょう。夜のネットサーフィンはするんですからね。

長距離の電車に乗る機会があって、ふと読んでみようと思い持って出ました。実際は帰宅途中の特急電車の中で少し読んだだけ。最初のほうは正直退屈で、バンコクで出会った美男美女が、男性側に婚約者がいるにもかかわらず激しい愛を交わしたというもの。

あー、こういう陳腐な展開ね…

離れるに離れられなかった二人。結婚式直前までこの逢瀬が続き、二人は別れる。男性は予定通り結婚。出世し、家族を愛し、幸せを掴んでいく。

何だよ…これ? (笑) よくある話じゃん!

ひとつ気になっていました。
なぜ舞台が1975年なのか。

第一部「好青年」が終わり、何となく「こんなものなの?」的な感想。確かに愛情表現に豊かなものは感じるし、若い時代に先行きも考えず愛し合うこともあるだろう。自分の若い時代をふと振り返ることにもなりました。しかし…

騙されたと思って第二部「サヨナライツカ」を読み始め、すぐに分かりました。この切なさ。ああ、第一部は、全て第二部に繋がるための伏線だったのか…

別れた二人。
偶然にも、25年後、50代後半、思い出のホテルで再会を果たすことになります。いや、それが偶然ではない、必然にも似た「想い」で繋がっていたのか… いや、胸が締め付けられました。

時に、夜中というか、明け方4時。
比較的退屈だった第一部と違い、第二部は夢中になって読んでしまいました。小説の中に「手紙」が出てくるのは最も嫌いなパターンなのですが、それを全く感じさせずに、その「愛」の手紙を一気に読んでしまいました。

あるよな。
いや、あるかも知れん。
そういう切なさ。
久々に小説を読んで、涙しました。
一体いつぶりだろう、そんなのは。人生の中で小説で泣いたなんて、全く記憶に無いくらいです。

若者には分かるまい(笑)
もしかしたら、「キモい」などと嘲笑するかもしれません。しかし、そこには、若者の浅薄かつ表層的な「レンアイ」ではなくて、運命的に惹かれ合ったにもかかわらず結ばれなかった、深い深い「恋愛」があったように思います。フィクションであるけれども、きっと数々の恋愛を経験してきた辻氏には分かる含蓄ある深い境地なんでしょうね。

そんなモテた経験もないのですが、分かる気がします。

そして、年齢。
死というものが現実感を持って迫ってくる年代、恥や外聞ではなく、「会いたい」、そして「会わなかったら後悔する…」 そんな気持ちに「嘘」が存在するわけがありません。死を前にして、人間は最も正直に、そして最も優しくなれるような気がしました。

「会いに来たよ」
そんな一言で、目が潤みます。
私にそんな人がいるわけじゃないのに、そんな言葉に反応するってのは、年齢なんだでしょうか。


サヨナライツカ。
この詩の存在もズルい。

「いつも人はサヨナラを用意して生きなければならない」

これだけでノックアウトです。
どんな人とも、絶対に、「サヨナラ」があります。
サヨナラを意識しないで生きていることを、きっと「幸せ」と言うのでしょう。

「人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと、愛したことを思い出すヒトにわかれる。私はきっと愛したことを思い出す。」

最初、この言葉が持つ意味をあまり理解できませんでした。
が、読後、これが非常に印象に残りました。

愛されたこと。
私だって、無いとは言いません。今だって、たぶんそうです(笑)

しかし、確かに。
死を目の前にして、「愛されたな…」と思い出すことはないでしょう。
自分が、最も愛した人に会いたくなるでしょう。最も愛した人と一緒にいたいと思うでしょう。

私もたぶん、「愛したことを思い出す」と思います。

ちょっとだけ、見直した。
辻仁成。
久々に「降参」した1冊でした。

くれぐれもR指定でお願いします(笑)

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