自分目線

32これ、何だと思いますか?

ティッシュを丸めて置いてあるだけです。

「なーんだ」
「早く捨てろよ」

と思うでしょうが、これを「アートだ」と主張されたら、そう簡単に捨てるわけにもいかなくなります。もちろん、

「何がアートだ、単なるチリ紙じゃないか!そんなものに価値は無い!」
と言い放つことも可能でしょう。でも、

「ティッシュで作ればゴミで、石膏で作ればアートなのか?」
「物質の違いで価値が見いだされるのか?」

と言われると、もちろんペーパーを使ったアートもあるわけで、どうにもこうにも反論のしようがないわけです。
とまぁ、そんな話を以前、小学生(中学受験生の演習)授業で話をしました。確か国語の文章がそんな話題だったからだと思いますが。

つまり、人間というのはそれほど外界のものを、自分の目や主観を通して見ているものです。つまり、「客観的存在」など、そもそも無いのだという話。誰もが同価値を認め、同じように見ているものなど何一つなく、地上に存在するものを、人間は「主観」でとらえているのだという話です。

子ども達も最初は何を言っているのかわからない文章だったようですが、このティッシュの話をするとだんだん分かってきたようです。なるほどと。

こういう考え方がきちんと身に着いていないと、「価値観の違い」というものの存在にすら気づかない尊大な人間が出来上がります。万国共通の概念というものはほとんど存在せず、その社会ごとに物事のとらえ方が違いますから、その社会の中でのとらえ方をいうのをちゃんと尊重しなければ国際的な紛争もそこここで起きることになります。

例の風刺画の問題も同じことが言えるように思うのです。
私はかなりユルいとは言え、イスラム国家であるマレーシアへ16回も渡航した経験があるので、イスラムの人々がどんな思いを持って敬虔に暮らしているのかを垣間見てはいます。イスラム教を生活の中でどのように心のよりどころにしているのか、そんなことも理解出来ないで自国の文化の主張のみを繰り返し、挑発的態度に出るというのは、先進国の奢り、西洋スタンダードの奢りではないかと懸念しています。

学生時代に私のあこがれの存在だった女性がいます。
宮崎緑氏。当時はNHK「ニュース9」のキャスター。美人キャスターの先駆者とも言えるでしょうね。現在彼女は千葉商科大学で先生をされています。今の学生は全然そんなこと知らんのだろうなぁ…
あと一人、猪口邦子氏。小泉政権で大臣をやられた彼女です。上智大の美人な先生として超憧れていました。だから上智に行きたかったんだけど…という、動機が不純な奴(笑)

で、その宮崎緑氏の後援会が実は代々木ゼミナールであったのです。私が浪人生の時。もちろんならんで、前の方で夢中になって話を聞きました。その中で、今でも印象に残っている話があります。

イスラム圏に行ったときの話。ある人がクリーニング屋に洗濯物を持って行くと、「明日までにやっておきます」と言われます。翌日行くと、また「明日までにやっておきます」、さらに翌日に行くと、また「明日までにやっておきます」と言われます。いい加減に腹が立って、「一体いつになったらできるんだ?」「明日までなんて嘘じゃないか」と詰め寄ると、「日本人は冷たい」と言うのだとか。もちろん明日までにできるなんて思っていないし、出来ないだろう、でもそれでも、、「明日までにやっておきます」というのが「優しさ」じゃないか… とクリーニング屋。

そうなんですね。これほどまでにイスラムの人々と、西洋の人々とは価値基準が全く異なります。出来もしないことを「やります」というのは、私達の常識からすれば「不誠実」なのですが、あるイスラム圏の考え方では、出来なくても「やっておくよ」というのが優しさ。だから、こちらも数日後に洗濯屋に行くのが常識なんだとか。

自分たちの常識とは全く異なる世界があるんだということをまず理解し、認めること。
そう言うことが出来る子どもを育てないと、自分の常識から外れた子を「イジメ」てみたり、誹謗してみたりが始まります。多様な価値観を認めるからこそ、自分とは異なる面白いものを探せるのであって、だからこそ「学び」が楽しいものだと思えるのです。異質なものを排除しては絶対いけません。ロクな子が育ちませんから。

「ふーん」という表情の生徒達ですが、子どもというのは意外な話を覚えておいてくれるものです。「そんなこと、オレ言ったっけ?」なんてこともしばしば。私が「動機が不純でも頑張ってりゃいいんだよ!」と言った(らしい)言葉を覚えていてくれて、公務員試験を頑張って受けて東京都の職員になったという子もいます。

そんなこと言ったかなぁ?(笑)

でも、意外な事を覚えていてくれる子ども達。こういう話も、物事の「とらえかた」として教えていくといい子どもが育ってくれるように感じています。

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