コミックでわかるアドラー心理学

最近流行っているんだそうです。このアドラーの心理学。どこの書店に行っても、数多くのアドラー心理学関係の書籍が平積みになっていて、最近注目されているようですが、アドラーの心理学自体は以前から存在するもの。チョット心得がある人なら、「何で今さら?」と思うのかも知れませんが、人間関係や子育て、仕事などで困っている人がとても多い昨今、生きるヒントになるような部分が大変多いことが、脚光を浴びている理由なのかもしれません。

 実は、私も専攻は心理学。一応「大衆心理学」を大学で専攻したことになっています。

 なっているというのは、まぁあまりちゃんと勉強したクチではないので、偉そうなことは言えないということ。それ系の卒論を一応書いて、一応単位を頂き、一応卒業したという程度であって、心理学の大家でも何でもありません。ただ、基礎的が学習はしましたし、そもそも人が好きでこんな仕事をしているのですから、人間心理については常に興味があります。人が面白いから、人を扱う仕事をする、これは「心理学」というベースがあったからこそなのかもしれませんね。

 アドラーの心理学は、正直、あまり私もなじみがありませんでした。ですから、初めて触れたようなもの。教務主任の浅見に聞くと、アドラーが注目され始めたのは90年代であると言います。そうかぁ… 私の入学が88年ですから、もしかするとギリギリかぶっていないくらいなのかもしれません。アドラーなんて出てきたかなぁ?なんて記憶ですから、私も大したことはありませんが、心理学と言えばフロイトやユングが中心。「心理分析」を主に行うのが「心理学」でした。同年代の方なら覚えているかもしれませんが、「それいけココロジー」というTV番組が流行って、本もベストセラーになりました。心理テストが流行し、「あなたはこういう人」だという分析が当たっている、当たってないというのがコンパのもっぱらのネタになっていた時代です。あれはやはり「心理分析」の領域。だから、やっぱりあの時代はフロイトやユングだったのでしょうかね…

 私の卒論では、スタンダールの「恋愛論」を扱いました。というより、もうドップリとスタンダールに浸かり、そこへ竹田青嗣(現早大国際教養学部教授)の「陽水の快楽」を充て込み、論文をやっつけたものでした。ですから、心理学というよりも、もう何だかよく分からない論文になっていたのでしょうが(笑)、一応「マスコミ学科卒」ということで、大衆心理を勉強したことになっています。

 以来、それほど真面目に学問として心理学を学んできたわけではありませんが、のべ2000人近い教え子の中で、実際に現場で数多くの子どもの相談に乗り、保護者の話を聞き、アドバイスをしたり、自分の意見を申し述べたりしながら、成功もし、また大失敗も重ねながら塾を続けてきました。己の未熟さゆえに救えなかった子もたくさんいます。己の若さゆえに的確なアドバイスを与えられなかったこともあります。今の私は、考え方も、実際口から出てくる言葉も若い頃とは随分と変わりました。

 今、改めてこのアドラー心理学を勉強してみると、実は知らず知らずのうちに自分はこれを実践していたのだなぁ…と感じます。決して知っていて、それを実践していたわけではありません。でも、同じようなことを考え、実践し、導いてきた、それを少々驚きながらも自画自賛するところもあります(笑)

 アドラーの理論でとても大きな部分は、「人間行動を因果律で考えることをやめる」というところだと思います。つまり、「どうしてあの人はこんなことをするのか?」という「原因」を考え、探るのが心理学の基本中の基本でした。確かに原因が分かれば、それを改善すればよいのだと誰もが思うでしょう。しかし、アドラーは目的論を提唱し、何を目的としてそんな行動に出ているのか?と考えるのです。

 私はよく、このようなコラムやブログなどあらゆるところで、「人間なんだから方程式通りには行かない」と言っています。フロイトやユングの心理学をかじった私も、心理学が何とも「使えない」ということを嫌というほど見てきました。占いのように「あなたはこんな人です」と言い当てたところで、相手の悩みは解消されず、元気に前へ一歩踏み出すことも無いからです。へぇ…と思うことはあるでしょうが、それが具体的改善行動にはつながりません。

 アドラーの心理学は「どうしてこうなった?」ではなく、「何のためにそんなことを?」と考えることで、この先どうしていけばいいのか、どう変わって行けばいいのかを考えていきます。それは後に行動主義から、自己実現を目指す人間の性質を明らかにする人間性心理学、ポジティブ心理学へと広がって行くことになります。

 学問を勉強し始めると、学問自体が目的となり、学問をすることが楽しくなってしまう人がいますが、私達俗世の人間から見れば、それは残念ながら「学問莫迦」にしか見えません。使ってナンボ、役に立ってナンボの世界であって、使えないものはどんなに立派でも無用の長物でしかありません。心理学とは、面白いけど実際は使えないよね… というものでした。実際、スクールカウンセラーなどという方々は、確かにいろいろ話を聞いてくれる人ですし、専門知識も持っている方ですが、なかなか問題解決にはご苦労があるようです。不登校やいじめ、心のケアなどという問題を抱えた時、スクールカウンセラーに相談したらすぐに解決したという話をなかなか聞きません。学問は「実学」になって初めて「用」をなすわけですが、心理学の知識がいくらあっても、そう簡単には実際に役立てられないものです。

 人間関係で問題を抱えている子は、他者意識の欠如が見られます。他者に関心を持ち、人間不信を払しょくすれば、「勇気」をもって困難に立ち向かえます。その「勇気」がなくなっているのが不登校や引きこもり。さて、どうやって勇気を持たせるか… まだ勉強ですね。


【コミックでわかるアドラー心理学】
向後 千春 (監修), ナナト エリ (作画)
 /KADOKAWA/1,080円

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