鐘の鳴る丘

鐘の鳴る丘という児童養護施設があります。
その昔、ラジオドラマで有名になったものを、後にそれを現実のものとしたらしいのですが、まぁ、親のいない子を育てる施設と、簡単に言えばそういうことです。

私は子どもの頃、そこへ入れられそうになりました。
理由は、親に嘘をついたから。
嘘つきは要らないと。で、オマエは捨てると言われ、目の前で父親が電話を掛けるというところまで行きました。

今考えるとブラフだったんだと思います。
電話をかけてなんていなかったんだと思います。
しかし、ものすごい恐怖でした。
「おとーさん、ごーめーんなーさーい…」
と大泣き。絶叫。「もーしません」
もう絶対親には嘘をつかないようにしようと心に誓いました。
いや、その後も結局は大小ありますが嘘はつきました(笑)

でも、親に逆らうと大変なことになる。
そういうことは覚えました。
親にはかなわない。
だから無駄な抵抗はしなくなりました。

学校教員だったからでしょうか、あまり普段は厳しいことを言うような父ではありませんでしたが、ここぞという場面では「鬼」でした。

しかし、これまた長男だからでしょうかね、父が夢中になって私と遊んでくれた記憶はいまだに残っています。よく、タオルを頭に巻いて、狭かった教職員住宅でしたが、へや一面にプラレールを敷き詰めて私と楽しそうに遊んでいた父の笑顔は、びっくりするほど覚えています。残念ながら弟は父とのそんな思い出は無いと言い切ります。父も疲れちゃったのかな…

私と父のとの間には様々なこんなエピソードがあるのですが、躾というのはビシっとやられたと思います。しかし、そのバックグラウンドとして、先ほど言ったような父の本当の愛情というのは十分すぎるほど感じていました。ですから、叱られた時に、
「オマエのためだ」
と言われても、説得力がありました。普段から愛情を感じないで育っていたら、「オマエのため」という言葉も白々しく聞こえたでしょう。

そして、重要だったのは母の存在。
父は具体的な行動しかしません。ドンと構えている人。
言うなれば、裁判官とか検察官。
母は父が怒っている理由や、なぜこんなことになったのか、何故鐘の鳴る丘なのか、なぜ私がした行動がいけないことなのかなどを滔々と話してくれました。諭していました。

時に面倒な時もありましたが、結果として、母の説教に間違ったところは一つも無かったように思います。子どもだって、きちんと説明されれば納得もするし、ダメなものはダメと言われれば、納得せざるを得ないもの。

しかし、世の父母の中には、言いっぱなしだったり、都合のいい時だけ出てきたり、結果だけを見て気分で叱ってみたり、逆に全く叱れなくて子どもにいいように振り回されてみたり… いろいろな父母がいるんだと、この業界に入って知りました。

子どもは、とにかく話すことです。
話をしなくても分かるなんてことはあり得ません。
むしろ、子どもは話がしたくて仕方ないのです。おしゃべり大好きです。
「KARAの中で誰が好き?」
KARAかぁ… 知らん!
でも、子ども達は一生懸命聞いてきます。学校でこんな子がいたとか、聞いてもいないのによく喋ります。

話をすること。聞くこと。
興味を持つこと。
その上で、正義をもって「躾」すること。

この夏、
「鐘の鳴る丘へ送るぞ」
と脅かした生徒がいました。説明されてビクっとしていましたが、あえて言ったというより、無意識に出てきました。自分が受けた教育は、そのまま出てくるものですね。前もって準備もせず、ずーっと忘れていたにもかかわらず、ふとそういう時に出てくるものなのですね。

人は自分が受けた教育の影響を深く受けるものです。
ということは、今の教育が将来の人格形成に大いに影響するということ。
そう考えると、大人がいい加減なことは言っていられません。
きちんと「正義」の概念を教えておくことが必要ですね。
何が正しくて、何が間違っているか。

私の価値観はシンプルだと思います。
そしてそれは全て桜学舎の方針に反映されています。
塾ですし、勉強を教えればそれで終わりのはずなのですが、そうはいかないところが桜学舎。
「躾」「教育」の部分も重視しています。
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