「辞める」と言われて嬉しかった子(いい意味で)

塾の先生は、塾をやめると言われると悲しくなります(笑)

「生徒が減るから?」
「月謝が減るから?」

ってよく言われますが、実はそうではなく、純粋に「寂しい」という感情だったり、自分の指導が評価されなくなったと感じたり、転塾であれば他所の指導に負けたという敗北感だったりと、かなり複雑な心境なんです。授業料収入が減るなんてことは、実は世間の皆さんが思っているほど気にしていないのが普通。これが筆頭に来る塾の先生は、教えることに興味があまりなく、経営者としての側面ばかりが目立つ「塾長」だったりします。そういう人は「塾経営者」ではありますが、「塾人」ではないので、我々とは同業にして全く異人種。これは数多くの「塾人」の先生が共感してくださることだと思います。

ゆえに、現場に出ている塾長や、そもそも授業をやりたくて塾を開いている「塾人」たちは、塾をやめると言われると心臓が止まりそうになるものです(笑)

ところが。

私は、「塾をやめる」と言われてとても嬉しかった経験があります。

その子は、小学生の頃から通っていた子でした。
中学受験を志して頑張っていたのですが、とにかく飲み込みもよくないし、いろんなことに時間がかかる子でした。世間から見れば「出来ない」子、そういう評価だったかも知れません。優秀な上の子がいたのもあるのでしょうか、一生懸命に頑張る子ではありましたが、なかなか結果に直結しなくて苦しんでいました。

でも、そんな子の特性をご家庭で受け入れていて、この子はこの子の人生を…とお考えになれる、とてもいいご家庭に育ったんだと思います。ノビノビと、ひねくれることもなく育ち、受験ではとある女子校に合格。良かった良かったとなりました。

それなりにお勉強は苦しかったようで、塾をやめずに高校2年生までコツコツと通ってきていました。そのせいか、学校の成績もある程度キープ出来ていて、苦労しながらも悪い成績ではありませんでした。

その子が、高校2年生の冬に、塾長室までやってきて、

「塾をやめようと思います」

と言ってきたのです。ほう、やめてどうする気なの?と聞くと、

「予備校で勉強してみたい」

と言い出したのです。ある程度ココまで勉強してきて、成績もキープしてきたと。大学を考えた時に、少し欲が出て、上の大学に行ってみたいと思うようになったと。ついては、予備校なるところで勉強をしてみたいと思ったので、ココで塾をやめようと思うと。彼女なりの一大決心だったのでしょうね。

ちょっと、ウルっと来ました。
「よくココまで成長したなぁ…」と。
正直、塾をやめると言われて、こんなに胸が熱くなったことはありませんでした。嬉しいと思ったこともありませんでした。でも、この時は、嘘偽りなく「嬉しいなぁ」「良かったなぁ」と思ったのでした。

小学校の時は、もしかしたら何か発達障害みたいなものがあるんじゃないかとも言われた子でした。でも、こうして予備校に行って勉強したいなどという意欲が出たなんて、本当に良かったと思いました。

実際、桜学舎には「発達障害」「学習障害」と言われた経験がある子が来ることがあります。無責任に受け入れるのはどうかと思っていますし、たかだか弱小塾なので出来ることにも限界があります。ですから、何も特別なことはしませんよ? うちのルールに従えるのならいいですよ?という前提で、分け隔てなく受け入れることにしていますが、「隠れ」も含めて、結構こういうお悩みでいらっしゃる方はいます。今年も「実は…」という方が何人も。

特別、狙って募集しているわけではないので、そこはご了承くださいね。受け入れ不可の場合もありますから。

ただ、小中は本当に苦労したのに、高校になって急に何かがつながって学年トップクラスの成績になってしまった子や、大学に進学した子(本当に驚かれます!)、立派に働いている子、勉強を続けている子など、様々います。どう変わるか、どう変わらないか、それすら分からないわけですが、いきなり大変化を遂げる子もいたわけで、そこには今までの苦労が報われた感があります。

いい辞め方をした子は、その先どこへ行こうと、結果がどうあろうと、顔を出してくれるものです。塾の先生なんて、必要なときだけ通ってきて、受験が終わればハイさようなら!という関係が多いのかも知れません。私自身、塾の先生は好きでしたが、だからといっていまだに交流がある人はいません。

が、今私は教え子の子(つまり孫の代)が塾に来てくれていたりしますし、つい先日も20年以上前の教え子から子どもを通わせたいという連絡がありました(実はウチに該当コースがなかったので他所を紹介したのですが…) 教え子たちも何かと連絡をしてくれたりしますし、何より教え子たちの講師に囲まれて過ごしていますからね… 塾の先生と生徒ってこんな関係だっけ?と思うこともしばしば。本当にありがたいことだと思います。

私にとって、ウチを辞めるか、残るかなんてどうでもいい問題なんです。
その子がより良い方向に向かっていけるなら、勉強する場がウチじゃなくても全然いいんです。自分の足で歩けるようになったら、それでいいんです。自転車に乗れるようになったら、補助輪は要らないんですよね。それでいいんです。ウチが要らなくなってくれることが、何よりの成長でしょう。

だからって、やめろと言っているわけじゃありませんよ!そこんとこ、よろしく(笑)

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